腎瘻(じんろう)とは、腎臓でつくられた尿が膀胱へ流れなくなったときに、背中側から腎臓へ細い管(カテーテル)を入れ、尿を体の外へ出す方法です。尿管(腎臓と膀胱をつなぐ管)が結石や腫瘍などでふさがると、尿が腎臓にたまり、腎臓の働きや感染に影響します。腎瘻はそれを防ぐために造られます。管は体の外で袋につながり、尿はそこにたまります。管の交換は医師や看護師が行い、ご家族は毎日の観察と清潔の保持を担います。
この記事でわかること
- 腎瘻とは何か、体のどこに管が入っているのか
- 腎瘻を造る理由と、一時的な場合・長く続く場合の違い
- 腎瘻のある暮らし(入浴・外出・仕事)の考え方
- ご家族が毎日見ること
- すぐに連絡や受診が必要なサイン
- 訪問看護が手伝えること
腎瘻を造ると決まったとき、「家で過ごせるのか」「お風呂はどうするのか」と不安になる方がいます。この記事では、腎瘻の基本と暮らしの考え方を整理します。交換の頻度や入浴の手順など手技の詳しい内容は、在宅での尿路カテーテル管理(膀胱留置カテーテル・膀胱瘻・腎瘻)で解説しているので、あわせてご覧ください。
Q: 腎瘻とは、体のどこにどんな管が入っているのか?
腎瘻は、背中の脇腹あたりの皮膚から腎臓の中心部(腎盂という尿がたまる空間)まで、細い管を通した状態です。管の先端は腎盂の中に留まり、体の外に出た部分が尿を集める袋につながっています。皮膚から腎臓までの管の通り道は「瘻孔(ろうこう)」と呼ばれます。
通常の尿の流れは、腎臓、尿管、膀胱、尿道の順です。腎瘻は、この流れの途中が通れなくなったときに、腎臓から直接尿を出す「抜け道」をつくります。
管は医師が画像(超音波やX線)で位置を確かめながら入れます。入れた後は、糸やテープ、専用の固定具で皮膚に留めます。
Q: なぜ腎瘻を造るのか?
腎瘻を造る主な理由は、尿管がふさがって尿が流れなくなったときに、腎臓を守るためです。尿の出口がふさがると、尿が腎臓にたまって腎臓が腫れ(水腎症)、放置すると腎臓の働きが落ちたり、細菌感染(腎盂腎炎)を起こしたりします。
原因には次のようなものがあります。
- 尿管結石:結石が尿管に詰まって尿が流れない
- 腫瘍による圧迫や広がり:骨盤の中などにできた腫瘍が尿管を外から押す、または尿管に及ぶ
- 手術や放射線治療のあとの狭窄:治療の影響で尿管が狭くなる
- 感染や炎症による閉塞
腎瘻を造る目的は、原因の治療そのものではありません。「尿を逃がして腎臓を守り、そのあいだに原因を治療する、または原因が続いても暮らしを続けられるようにする」ことです。どの方法を選ぶかは、原因や全身の状態、今後の治療方針によって、主治医が決めます。
一時的な腎瘻と、長く続く腎瘻
腎瘻には、一時的に造る場合と、長く続ける場合があります。
一時的な場合は、結石の治療や感染の治療が終わるまでの橋渡しとして造ります。原因が取り除かれれば、管を抜くことがあります。
長く続く場合は、腫瘍などで尿管の閉塞が続くときです。管を定期的に交換しながら使い続けます。どちらになるかは、経過を見ながら主治医が判断します。今後の見通しは主治医に尋ねてください。
Q: 腎瘻と、膀胱瘻・尿管ステントは何が違うのか?
腎瘻と似た名前や目的の方法があるので、違いを整理します。
腎瘻は、腎臓に管を入れて尿を体の外へ出します。管の入口は背中側です。
膀胱瘻は、下腹部の皮膚から膀胱に管を入れます。腎臓から膀胱までの流れは保たれていて、膀胱から先の出口に問題があるときに使います。
膀胱留置カテーテル(バルーンカテーテル)は、尿道から膀胱へ管を入れる方法で、体の外に傷口はできません。
尿管ステントは、細い管を尿管の中に入れて、内側から尿の通り道を保つ方法です。体の外に管は出ません。尿管ステントが入れられない、または使えないときに、腎瘻が選ばれることがあります。
違いは、管の入口と、尿をどこから出すかです。膀胱瘻・膀胱留置カテーテルの管理は、冒頭で紹介した尿路カテーテル管理の記事にまとめています。
Q: 腎瘻があっても、これまでの暮らしを続けられるのか?
腎瘻があっても、自宅で暮らし、日常の活動を続けられる場合があります。ただし、できることの範囲は、病気の状態や管の位置、主治医の判断で変わります。ここでは考え方の枠組みをお伝えします。個別の可否は主治医と訪問看護師に確認してください。
日常生活
基本は、管を引っ張らない、折らない、袋を腎臓より低い位置に保つの3点です。尿の袋が腎臓より高くなると、袋にたまった尿が腎臓の方へ逆戻りして、感染の原因になるおそれがあります。
衣類は、ゆとりのあるものが向いています。ベルトやウエストのゴムが管や袋を締めつけないようにしてください。
寝るときは、管の上に体が乗っていないか、袋が体より低い位置にあるかを確認します。
入浴
腎瘻があっても、入浴できる場合があります。ただし、入浴の可否と方法は、主治医の指示と管の状態で変わります。瘻孔部が濡れてよいか、防水の保護が要るか、造って日が浅いときはどうするかは、人によって違います。
自己流での入浴は避け、看護師から手順の指導を受けてから行ってください。
外出・旅行
外出もできます。袋を腎臓より低い位置で持ち歩けるよう、専用のポーチや固定具を使い、出かける前に袋の尿を空けておきます。
旅行では、袋の替えなどの物品を持ち、行き先の近くの医療機関を調べておくと安心です。強い衝撃がかかるスポーツや、腰を強くひねる動作は、管がずれる原因になるため、事前に主治医へ相談してください。
仕事
仕事を続けられるかは、仕事の内容と腎瘻の状態で決まります。重い物を持つ、腰をかがめる、汗を大量にかくといった仕事では、管のずれや皮膚トラブルに気を配ります。袋を空ける場所や時間を確保できるかも確認したい点です。職場への伝え方や仕事の調整は、主治医や訪問看護師と一緒に考えられます。
Q: 家族が毎日見ることは何か?
ご家族が毎日行うのは、観察、清潔の保持、固定の確認、袋の管理です。交換や洗浄などの医行為は、医師や看護師が行います。毎日見ているご家族の気づきが、早い段階の異常発見につながります。
尿の量・色・濁り
袋にたまる尿の量と、色、濁りを確認します。昨日と比べて極端に少ない、血が混じる、濁りが強い、においが強いといった変化は、記録して看護師に伝えます。血が混じるのは、動いた後に一時的に薄いピンク色になる程度のこともあれば、赤みが強い、凝血塊(血の固まり)が出る場合もあります。後者は連絡が必要です。
管の状態
管が折れていないか、ねじれていないか、体の下敷きになっていないかを見ます。管が引っ張られて固定がゆるんでいないか、外に出ている管の長さが変わっていないかも確認してください。管の印の位置が、前日と変わっていたら、ずれのサインです。
管の入口の皮膚
管が出ている皮膚(瘻孔部)の、赤み、腫れ、痛み、膿のような液、出血、尿のにじみを見ます。入口の周りが濡れていたら、尿がもれている可能性があります。
袋の位置と排出
袋は常に腎臓より低い位置にします。袋が半分程度たまったら空けます。空ける際は、排出口が床や服に触れないようにし、終わったら排出口をふいて閉じます。袋の交換や管の交換は、看護師の担当です。
水分と体調
水分の目標量は、病気の状態や主治医の方針で変わります。自己判断で大量に飲んだり控えたりせず、看護師に確認してください。発熱、脇腹の痛み、寒気、食欲の低下といった全身の変化も、尿の変化と合わせて伝えます。
Q: すぐに連絡・受診が必要なサインは?
次の状態があれば、自己判断でカテーテルを触らず、訪問看護師または主治医に連絡してください。夜間や休日の連絡先は、事前に確認して見える場所に貼っておきます。
- 管が抜けた、または半分抜けかかっている。時間がたつと瘻孔が狭くなり、管を再び入れにくくなることがあるため、早く連絡してください。ご家族が管を入れ直すことは、腎臓や周りの臓器を傷つけるおそれがあるため行いません。清潔なガーゼで入口を軽く覆い、連絡します
- 尿が数時間にわたってまったく出ない、または明らかに減った。管の詰まりや折れの可能性があります。
- 発熱や悪寒、ふるえ。腎盂腎炎など尿路の感染が疑われます。腎瘻のある方の発熱は、早く治療が必要なことがあります
- 背中や脇腹の強い痛み、吐き気
- 赤みが強い尿、血の固まりが混じる尿
- 管の入口からの出血、強い腫れ、膿
- 管の周りから、袋に入らずに尿がもれ続ける
意識がもうろうとする、ぐったりして呼びかけへの反応が鈍いといった場合は、感染が全身に広がっている可能性があります。このようなときは、迷わず救急車(119番)を呼んでください。強い寒気とふるえが続くなど、救急車を呼ぶか判断に迷うときは、訪問看護の連絡先か主治医に電話で相談してください。
Q: 訪問看護は腎瘻のある暮らしをどう手伝えるのか?
訪問看護師は、腎瘻の管理を、主治医の指示のもとで行います。具体的には次のとおりです。
- 管の入口の皮膚、管の固定、尿の状態を診て、早めに異常に気づく
- 管や袋の交換を、主治医の指示に基づいて計画的に行う
- ご家族に、袋の空け方、観察の見方、連絡の目安を実際のお宅で教える
- 入浴の方法や、外出・仕事の工夫を、暮らしに合わせて一緒に考える
- 異常があったとき、主治医や病院へ状況をつなぐ
Footage訪問看護ステーションでは、管の管理だけでなく、痛みや食事、日々の過ごし方など、腎瘻のある暮らし全体のご相談を受け付けています。
なお、介護保険と医療保険のどちらで訪問看護を使うかは、年齢や病気の状態で決まります。まずは主治医、退院前なら病院の相談窓口、介護保険を使っている方はケアマネジャーに、訪問看護を使いたいと伝えてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 腎瘻は一生つけたままですか?
いいえ、一生とは限りません。結石や感染などの原因が治療できれば、管を抜ける場合があります。一方、腫瘍などで尿管の閉塞が続く場合は、管を交換しながら使い続けます。今後の見通しは、主治医に確認してください。
Q2. 腎瘻のカテーテルは自分で交換できますか?
いいえ、交換は医師や看護師が行う医療行為で、ご本人やご家族は行いません。腎臓に直接つながる管のため、手技を誤ると出血や感染のおそれがあります。交換の時期は主治医の指示で決まります。交換の目安などは在宅での尿路カテーテル管理で解説しています。
Q3. 腎瘻があるとお風呂に入れませんか?
入浴できる場合があります。ただし、管の入口の保護や入浴の方法は、主治医の指示と管の状態で変わります。造って間もないときは控える場合もあるため、自己判断で入らず、看護師に手順を確認してください。
Q4. 尿が少しピンク色になりました。受診が必要ですか?
動いた後に一時的に薄いピンク色になり、まもなく元の色に戻る場合は、様子を見ることもあります。赤みが強い、長く続く、血の固まりが混じる、発熱や痛みを伴う場合は、早めに訪問看護師か主治医に連絡してください。
Q5. 腎瘻のある人の家族ができる医療行為はありますか?
袋の尿を空ける、尿や皮膚の観察、入口の周りの清潔の保持などは、ご家族が担えます。管の交換、洗浄液を流し込む処置、抜けた管の入れ直しは医療行為で、ご家族は行いません。医療行為の考え方は、家族やヘルパーができる医療行為は?にまとめています。
まとめ
腎瘻とは、尿管の閉塞などで尿が流れなくなったときに、背中から腎臓へ管を入れて尿を体の外へ出し、腎臓を守る方法です。一時的に使う場合と、長く続ける場合があります。管を引っ張らない、袋を腎臓より低く保つ、尿と入口の皮膚を毎日見る、といった基本を守れば、入浴や外出、仕事を調整しながら暮らしを続けられる場合があります。管が抜けた、尿が出ない、発熱や強い痛みがあるときは、自分で対処せず、すぐに訪問看護や主治医へ連絡してください。腎瘻のある暮らしに不安があれば、ひとりで抱え込まずにご相談ください。
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