高次脳機能障害のリハビリとデイサービスの役割|注意障害・記憶障害・遂行機能障害への対応
高次脳機能障害は、脳卒中や頭部外傷の後に生じる「見えにくい障害」であり、デイサービスでの継続的なリハビリが日常生活の自立度向上に有効です。東京都の実態調査(平成20年)からの推計では、全国の高次脳機能障害者は約50万人とされています(渡邉修ら、日本リハビリテーション医学会誌46(2), 2009)。最新の厚生労働省関連推計では約23万人とする集計もあり、把握されていない潜在患者の存在が指摘されています。適切な認知リハビリテーションの継続により、注意・記憶・遂行機能の改善が期待されます。改善率は症状の重症度・脳損傷部位・継続期間により異なります。
Re-move(リムーブ)は、パーキンソン病に特化した運動型のデイサービスです。高次脳機能障害のある方のご利用もありますが、高次脳機能障害に特化した認知リハビリのプログラムは提供していません。本記事は、ご家族や支援者の方に向けた一般的な解説としてまとめています。
この記事でわかること
- 高次脳機能障害の主な症状と日常生活への影響
- デイサービスで実施される認知リハビリの具体的内容
- 運動と認知機能の関連性を示すエビデンス
- ご家族が自宅で実践できる支援のコツ
- Re-move でできること・できないこと
Q: 高次脳機能障害とはどのような障害なのか?
高次脳機能障害は、脳の損傷により認知機能(注意、記憶、遂行機能、社会的行動など)に障害が生じた状態の総称です。身体的な障害と異なり外見からはわかりにくく、「見えない障害」と呼ばれます。
主な症状と日常生活への影響
| 障害の種類 | 症状 | 日常生活での困りごと |
|---|---|---|
| 注意障害 | 集中力の低下、注意の転導性亢進 | テレビを見ながら会話できない、作業を長時間続けられない |
| 記憶障害 | 新しいことが覚えられない、約束を忘れる | 薬の飲み忘れ、予定の管理が困難 |
| 遂行機能障害 | 計画を立てて実行できない | 料理の手順がわからなくなる、買い物リストが作れない |
| 社会的行動障害 | 感情コントロールの困難、衝動性 | 怒りやすい、場にそぐわない言動 |
| 半側空間無視 | 片側の空間を認識できない | 食事の片側を残す、片側の障害物にぶつかる |
厚労省高次脳機能障害支援モデル事業報告等によれば、原因疾患は脳血管障害(脳卒中)が最多で、次いで頭部外傷、脳腫瘍・脳炎などが続きます。
Q: デイサービスではどのような認知リハビリが行われるのか?
認知リハビリテーションは、障害された認知機能を直接訓練する「直接的アプローチ」と、残存機能を活用して生活に適応する「代償的アプローチ」の2つを組み合わせて実施します。
注意障害に対するプログラム
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注意力トレーニング課題:タブレットを使った視覚探索課題(画面上の特定の記号を見つける)
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デュアルタスク訓練:歩行しながらの計算、会話しながらの物品操作
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段階的な作業時間の延長:5分→10分→15分と集中時間を段階的に増やす
記憶障害に対するプログラム
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メモリーノートの活用訓練:手帳やスマートフォンの予定管理機能を使う練習
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エラーレス学習:間違いを経験させずに正しい手順を反復学習する方法
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空間配置記憶訓練:物の定位置を決め、毎回同じ場所に戻す習慣づけ
遂行機能障害に対するプログラム
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調理訓練:レシピを見ながら手順通りに調理する実践的訓練
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目標管理訓練(GMT):目標→手順分割→実行→確認の4ステップを反復
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スケジュール管理訓練:週間予定表の作成と実行
Q: 運動は高次脳機能障害の改善にも効果があるのか?
はい、有酸素運動が認知機能の改善に寄与するというエビデンスが蓄積されています。
複数の脳卒中後認知機能リハビリテーションのメタ分析で、週3回以上・30分以上の有酸素運動を12週間以上継続することで、注意機能や遂行機能の改善が報告されています。
運動が認知機能を改善するメカニズム
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BDNF(脳由来神経栄養因子)の増加:有酸素運動がBDNFの分泌を促進し、海馬の神経新生を支える
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脳血流の改善:運動による心拍出量の増加が脳への血流を15〜20%増加させる
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神経可塑性の促進:反復的な運動課題が損傷周辺の神経ネットワークの再編成を促す
Re-move で行っているのは有酸素運動を中心とした運動プログラムで、認知リハビリと組み合わせた専門プログラムは提供していません。ここで述べているのは、有酸素運動そのものについて報告されている一般的な知見です。
ご家族が自宅で実践できる支援のコツ
高次脳機能障害のある方の自宅生活では、ご家族の理解と環境調整が回復を後押しします。
5つの実践ポイント
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環境をシンプルに:テレビの音量を下げる、物を定位置に置く。注意障害のある方は刺激が少ない環境で集中しやすくなります
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1つずつ伝える:「お茶を飲んで、薬を飲んで、歯を磨いて」ではなく、「まずお茶を飲みましょう」と1つずつ伝える
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メモやカレンダーを活用:記憶の外部補助具として、目に見える場所にスケジュールを掲示する
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できたことを認める:小さな成功体験の積み重ねが自己効力感を高めます
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ご家族自身の休息:高次脳機能障害の介護は精神的負担が大きいです。レスパイトケアとしてのデイサービス利用も重要な選択肢です
Re-move でできること・できないこと
高次脳機能障害で検索してこられた方に、誤解のないようお伝えします。Re-move は高次脳機能障害の専門施設ではありません。ご利用はいただけますが、認知機能への専門的な評価・訓練プログラムは持っていません。下記は、当施設で実際に行っている運動についての説明です。
身体機能の評価
PT・OT が在籍しており、ご利用開始時と定期的なタイミングで身体機能を測定しています。測定するのは体重・ファンクショナルリーチ・片脚立ち・TUG・握力・30秒椅子立ち上がりの6項目です。認知機能の専門的な検査(MMSE・TMT・FAB など)は実施していません。それらが必要な場合は、医療機関や高次脳機能障害の専門支援機関にご相談ください。
TRX(サスペンショントレーニング)の活用
高次脳機能障害のある方は脳卒中の後遺症を伴うことが多く、運動時のバランスが課題になります。Re-move では TRX(サスペンショントレーニング) を導入しています。ストラップを握って身体を支えながら動作できるため、片麻痺があっても転倒リスクに配慮しながら、一人ひとりに合わせた負荷で体幹・下肢を動かせます。
有酸素運動
Re-move では有酸素運動を行っています。デュアルタスク訓練や認知課題を組み合わせた専門プログラムは提供していません。
日常でよくみられる困りごと
高次脳機能障害の表れ方は多様です。一般に知られている例として、脳卒中後の半側空間無視で食事の左半分を残してしまう、脳損傷後に見知った名前が思い出せなくなる、料理の手順を途中で忘れてしまう、怒りやすくなったとご家族が感じる、といったものがあります。損傷部位や発症からの経過によって必要な支援は異なります。
なお Re-move のご利用者のうち、高次脳機能障害のある方は全体の 1% 未満です。専門的な対応をお求めの場合は、高次脳機能障害支援拠点機関などにご相談いただくのが確実です。
こんなケアは逆効果(失敗パターン)
高次脳機能障害の方へのケアで陥りやすいポイントも紹介します。(1)「忘れたことを訂正したり責めたりする」——本人の自己効力感を損ない、リハビリ意欲を低下させます。(2)「複数の手順を同時に指示する」——注意障害がある方は一度に1つの指示に絞ると実行しやすくなります。(3)「現状を見きわめないまま現実に合わない目標を設定する」——期待が高すぎると意欲の低下につながるため、現状に基づく中期目標(3~6か月)をPT/OTと一緒に設定します。(4)「接し方の変化を『さぼり』と言われる」——脳損傷による性格の変化は病気の結果であり、ご本人の意図ではないことをご家族が理解することが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 高次脳機能障害があってもデイサービスに通えますか?
はい、以下のいずれかに該当すれば利用可能です。
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要介護1〜5:介護保険の通所介護(介護給付)
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要支援1・2:介護予防・日常生活支援総合事業の通所型サービス
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事業対象者(要介護認定は受けていないが、市区町村の基本チェックリストで生活機能の低下が確認された65歳以上の方):総合事業の通所型サービス
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65歳未満で障害者手帳を持つ方:障害福祉サービス(自立訓練給付等)での利用が主になります
なお、40〜64歳の方でも、脳血管疾患(脳卒中等)を原因とする高次脳機能障害の場合は、脳血管疾患が介護保険の特定疾病(16疾病)に含まれるため、第2号被保険者として要介護・要支援認定を申請できる場合があります。詳細はお住まいの市区町村または地域包括支援センターにご相談ください。
出典: 介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(厚生労働省)、介護保険法第7条第3項(特定疾病)
Q2. 発症からどのくらい経っていてもリハビリの効果はありますか?
発症後1年以上経過していても、適切なリハビリにより改善が期待できます。 かつては「6か月で回復が止まる」と言われていましたが、近年の研究では神経可塑性は長期にわたって維持されることが示されています。国立リハビリテーションセンターの追跡調査(2023年)では、発症2年後のリハビリ開始でも認知機能の改善が認められた事例が報告されています。
Q3. 高次脳機能障害のリハビリは何が目標になりますか?
「障害をゼロにする」のではなく、「障害があっても自分らしい生活を送れること」が目標です。 具体的には、1人で買い物ができる、予定を管理できる、家事の一部を担えるなど、生活上の具体的な活動を目標に設定します。
Q4. 本人が障害を自覚していない場合はどうすればよいですか?
高次脳機能障害では、障害の自覚が乏しい(病識の低下)ことが特徴の一つです。 無理に障害を認めさせようとするのではなく、「困っていること」に焦点を当てた支援から始めます。デイサービスでの活動を通じて、自然と「できること」と「難しいこと」の理解が進むケースが多いです。
Q5. 家族も一緒にリハビリの相談はできますか?
高次脳機能障害は「本人だけでなく家族も支援が必要な障害」です。 自宅での接し方、環境調整、利用可能な制度については、担当のケアマネジャーや高次脳機能障害支援拠点機関にご相談ください。
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まとめ
高次脳機能障害は「見えにくい障害」ですが、適切なリハビリと環境調整で生活の質を大きく改善できます。
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東京都の実態調査からの推計で全国に約50万人の高次脳機能障害者(渡邉ら, 2009)。最新の厚労省関連推計では約23万人とする集計もあり、潜在患者の存在が指摘されている
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認知リハビリテーションの継続により注意・記憶・遂行機能の改善が期待される(改善度合いは個別差あり)
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有酸素運動は脳卒中後の認知機能改善に寄与することが複数のメタ分析で報告されている
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ご家族の理解と環境調整が回復の重要な後押しとなる
「見えにくい障害」でも、一歩ずつ「できること」を増やしていくことは可能です。まずは担当のケアマネジャーや、お住まいの地域の高次脳機能障害支援拠点機関にご相談ください。
