慢性疼痛とデイサービス|痛みと上手に付き合う運動療法プログラム

慢性疼痛は「安静にしていれば治る」ものではなく、適切な運動療法が痛みの軽減と生活の質の向上に有効です。Pain in Japan 2010 の調査では、日本の成人の約22.5%(約2,315万人)が3か月以上続く慢性疼痛を抱えていると報告されていり(中村雅也ほか, 臨床整形外科 47巻2号, 2012)、そのうた、そのうち65歳以上の高齢者は一定の割合を占めるとされています。慢性疼痛診療ガイドライン(2021年改訂版)では、運動療法が薬物療法と並ぶ主要なエビデンスベースの介入として位置づけられており(出典: 慢性疼痛診療ガイドライン – Mindsガイドラインライブラリ)、NRSの改善効果が複数の系統的レビューで示されています。

私たちRe-move(リムーブ)では、PT/OT常駐の体制で利用者一人ひとりの痛みの状態に合わせた個別運動プログラムを提供し、利用開始時と3か月後の評価で一人ひとりの変化を確かめています。

この記事でわかること

  • 慢性疼痛のメカニズムと「動くことの重要性」
  • 運動療法が痛みを和らげる科学的根拠
  • デイサービスで実施される慢性疼痛向けプログラムの内容
  • 自宅でも続けられる簡単な運動の紹介
  • Re-moveの個別運動プログラムの特徴

Q: なぜ慢性疼痛には「動くこと」が重要なのか?

慢性疼痛は、急性痛とは異なるメカニズムで維持されています。痛みが3か月以上続くと、脳の痛み認知回路が過敏化(中枢性感作)し、組織の損傷が治っていても痛みを感じ続ける状態になります。

安静の悪循環

「痛いから動かない」→「筋力低下・関節拘縮」→「動くとさらに痛い」→「もっと動かなくなる」という悪循環が、慢性疼痛の最大の敵です。慢性疼痛患者では安静による筋力低下が顕著に進むことが複数の研究で示されており、不活動状態が長期化すると歩行能力などの機能が低下したとの報告もあります。

運動が痛みを和らげるメカニズム

運動療法が慢性疼痛を改善する主な機序は3つあります。

  1. 内因性オピオイドの分泌:有酸素運動により脳内でエンドルフィン(内因性鎮痛物質)が分泌され、痛み閾値が上昇する

  2. 下行性疼痛抑制系の賦活:規則的な運動が脳幹からの痛み抑制シグナルを強化する

  3. 末梢循環の改善:血流増加により炎症性サイトカインの除去が促進される

Cochrane Review 等の系統的レビュー(Geneen LJ et al., Cochrane Database Syst Rev. 2017, Physical activity and exercise for chronic pain in adults: an overview of Cochrane Reviews ほか)では、運動療法がコントロール群と比較して痛みと身体機能の改善に有効であることが報告されています。


Q: デイサービスではどのような運動プログラムが行われるのか?

慢性疼痛に対する運動プログラムは、痛みの種類と部位に応じて個別に設計されます。

代表的なプログラム構成

プログラム 内容 対象 時間
有酸素運動 エルゴメーター、水中歩行、トレッドミル 全般性慢性疼痛 20〜30分
筋力トレーニング セラバンド、自重運動、マシントレ 腰痛、膝痛 15〜20分
ストレッチング 静的ストレッチ、動的ストレッチ 関節拘縮を伴う疼痛 10〜15分
水中運動 温水プールでの運動 荷重時痛が強い方 20〜30分
リラクゼーション 呼吸法、マインドフルネス 心理的要因の強い疼痛 10分

運動強度の設定

慢性疼痛の運動療法では、「痛みが悪化しない範囲」で行うことが原則です。具体的にはBorg指数(主観的運動強度)で11〜13(「楽である」〜「ややきつい」)が目標です。痛みのNRSが運動前と比較して2ポイント以上上昇した場合は、強度を下げるか中止します。


Q: 自宅でも続けられる慢性疼痛の運動はあるか?

デイサービスで学んだ運動を自宅でも継続することで、効果が持続します。以下は安全に行える自主トレーニングの例です。

腰痛の方向け

  • 膝抱え運動:仰臥位で片膝を胸に引き寄せ15秒キープ。左右交互に5回ずつ

  • 骨盤傾斜運動:仰臥位で骨盤を前後に傾ける動きを10回。腰部の筋緊張を緩和

膝痛の方向け

  • 椅子スクワット:椅子から立ち上がる→ゆっくり座る。10回×2セット

  • 大腿四頭筋セッティング:座位で膝を伸ばし、太もも前面に力を入れて5秒キープ。10回

全身の痛みがある方向け

  • 椅子に座ったままの有酸素運動:足踏み運動を5分間。テレビを見ながらでも実施可能

  • 深呼吸エクササイズ:4秒吸って、7秒止めて、8秒で吐く。5回繰り返し


Re-moveの慢性疼痛への取り組み

PT/OT常駐による個別プログラム

Re-moveでは理学療法士(PT)と作業療法士(OT)が常駐し、利用者一人ひとりの痛みの部位・程度・生活への影響を評価した上で、個別の運動プログラムを設計します。握力・歩行速度・AIを活用した姿勢評価・片脚立位保持時間・TUG・30秒椅子立ち上がりテスト・FRTの7指標で定期的に効果を測定し、プログラムを更新しています。

TRX(サスペンショントレーニング)の活用

慢性疼痛の方にとって「痛みが出ない範囲で運動を続けること」は大きな課題です。Re-moveでは TRX(サスペンショントレーニング) を導入しています。ストラップを握って身体を支えながら動作できるため、関節への荷重を軽減しつつ、一人ひとりに適正な負荷で体幹・下肢を同時に強化できます。ストラップの角度を調整するだけで負荷を段階的に変えられるため、痛みの程度に合わせたPT/OTの個別指導が可能です。

実績データ

  • 転倒リスクに直結する5項目(歩行速度・片脚立位保持時間・TUG・30秒椅子立ち上がりテスト・FRT)を、利用開始時と3か月後に測り、一人ひとりの変化を確かめています。

  • 見学・体験利用で実際のプログラムに参加してから、利用を検討いただけます。

痛みの「見える化」

痛みの数値評価(NRS)を毎回記録し、運動前後の変化を利用者ご本人と共有しています。「今日は運動後に痛みが1ポイント下がった」という実感が、運動継続のモチベーションにつながります。

こんな状態の方が利用されています

慢性疼痛の診断名は多岐にわたります。Re-moveで多いのは《腰部脊柱管狭窦窒による下肢痛み・しびれ》《変形性膝関竑症による荷重時の膝痛》《肩関竑周囲炎後の可動域制限》《骨粗しょう症性椎体骨折後の慢性背痛》《緊張型頭痛・めまいを伴う上肢の痛み》等です。長く痛みと共に歩いてきた方ほど「動くことへの恐怖感(kinesiophobia)」が強く、最初は座位中心の温和な内容から始めます。中等度の涻遺付近まで段階的に負荷を上げることが、自宅生活への復帰につながります。

こんなやり方は逆効果(失敗パターン)

慢性疼痛のセルフケアで起こりがちな失敗も知っておいてください。(1)「痛みを我慢して無理に運動を続ける」——炎症を悪化させ、次のセッションを中断するリスクが高まります。NRSが運動前より2ポイント以上上昇したら中止が原則です。(2)「痛くて動けないから安静」——結果として筋力が落ち、ますます動きにくくなる悪循環に入ります。(3)「インターネットの情報だけで自己流の腰痛体操を実践」——フォームや負荷が自分の状態に合っていないと、痛みの部位が広がったり別の関節を傷める可能性があります。PT/OTの評価を受けることでこれらを防げます。

ご家族・周囲の方へのお願い

慢性疼痛は「見た目に出ない痛み」のため、周囲に理解されづらいという辤いがあります。「気のせいじゃない?」という声かけは、ご本人の被認識感を強めることがあります。Re-moveではご家族に向けて、痛みの数値記録と運動の継続を共に見守ること、「今日はよく頑張ったね」と行動に目を向ける声かけをお願いしています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 痛みがあっても本当に運動して大丈夫ですか?

はい、適切な強度の運動は慢性疼痛の改善に有効であるというエビデンスが確立しています。 慢性疼痛診療ガイドライン(2021年)では、運動療法が主要なエビデンスベースの介入として推奨されています(推奨度・エビデンスレベルの詳細はガイドライン本文をご確認ください)。ただし、急性期の炎症(赤く腫れて熱を持っている状態)がある場合は運動を控え、まず医療機関の受診を推奨します。

Q2. どのくらいの期間で効果が現れますか?

運動療法の効果は4〜8週間で実感できることが多いです。 Cochrane Review(2023年)では、週2〜3回の運動を8週間以上継続した群で有意な痛みの改善が報告されています。重要なのは「痛みがなくなること」ではなく「痛みがあっても活動できること」を目標にすることです。

Q3. デイサービスでの運動と整形外科のリハビリの違いは何ですか?

整形外科のリハビリは医療保険で短期集中的(通常150日以内)、デイサービスの機能訓練は介護保険で長期継続的です。 医療リハビリ終了後の「維持期」にデイサービスの運動プログラムを活用することで、リハビリ効果の維持・向上が期待できます。

Q4. 慢性疼痛の運動プログラムがあるデイサービスは珍しいですか?

慢性疼痛に特化したプログラムを持つデイサービスは限られています。 全国約44,000か所のデイサービス(厚労省「介護サービス施設・事業所調査」2024年)のうち、PT/OTが常駐する機能訓練特化型は業界推計で約15%とされています(厚労省の集計区分ではなく、所要時間3~4時間型に多いとされる分類)。Re-moveはPT/OT常駐体制で、個別の運動プログラムを提供しています。

Q5. 介護保険を使ってデイサービスに通うにはどうすればよいですか?

デイサービス(通所介護)および相当する通所型サービスは、3つのルートで利用できます。

  • 要介護1〜5:介護保険の通所介護(介護給付)

  • 要支援1・2:介護予防・日常生活支援総合事業の通所型サービス(第1号事業)

  • 事業対象者:要介護認定を受けていない65歳以上の方で、市区町村の基本チェックリストで生活機能低下が確認された方。総合事業の通所型サービスを利用可能

まずはお住まいの市区町村の介護保険窓口または地域包括支援センターにご相談ください。要介護認定の申請から認定まで約30日、基本チェックリストは数日〜即日で判定されます。判定後、担当ケアマネジャー(要支援者・事業対象者は地域包括支援センター)にRe-moveの利用希望をお伝えください。

出典: 介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(厚生労働省)、介護保険法第115条の45


あわせて読みたい


まとめ

慢性疼痛は「安静」ではなく「適切な運動」で改善します。

  • 日本の成人の約22.5%(約2,315万人)が慢性疼痛を抱えている(Pain in Japan 2010)

  • 運動療法はNRSの改善効果が複数の系統的レビューで示され、慢性疼痛診療ガイドライン(2021)で主要な介入として位置づけられている

  • 不活動状態の長期化は筋力・歩行能力の低下を招くため、悪循環を断ち切ることが重要

  • デイサービスでの運動を自宅でも継続することで効果が持続

痛みを抱えながらも「できること」を増やしていく。私たちRe-moveは、あなたのペースに合わせた運動プログラムでそのお手伝いをします。

Re-moveの見学・体験申込はこちら