公開日: 2026-04-07 | カテゴリ: 訪問看護コラム


自宅での療養生活が続く中で、「床ずれができてしまった」「皮膚が赤くなっていて心配」という声を、私たち訪問看護師はよく耳にします。褥瘡(じょくそう)は、同じ姿勢で長時間過ごすことで皮膚や皮下組織が圧迫され、血流が滞ることで生じる皮膚の損傷です。一度できてしまうと治癒に長い時間がかかり、感染症へと発展するリスクもあります。

在宅療養では、病院のように24時間スタッフが観察できる環境ではありません。そのため、ご本人やご家族が正しい知識を持ち、日常のケアに取り組めるかどうかが、褥瘡の予防と早期対処の鍵になります。私たち訪問看護師は、医師や他職種と連携しながら、その最前線でご家族と一緒に歩みます。

褥瘡は「重度な状態にならないと相談しにくい」と感じている方も多いです。しかし、実際には軽度な段階でのアプローチほど効果が高く、在宅でも十分に予防とケアができます。この記事では、訪問看護の専門的な視点から、褥瘡のメカニズム・予防策・ケアのポイントをお伝えします。


専門的視点による褥瘡予防・ケアのポイント

1. 圧迫を取り除く「体位変換」と「除圧用具」の活用

褥瘡の最大の原因は、皮膚への持続的な圧迫です。日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」では、定期的な体位変換と適切な体圧分散用具の使用が、褥瘡予防の最重要介入として推奨されています(参考: 日本褥瘡学会ガイドライン第5版)。

体位変換の目安は2時間ごとが基本とされていますが、使用するマットレスの種類や本人の状態によって適切な間隔は異なります。圧切替型エアマットレスを使用する場合は、4時間おきでも有効というエビデンスがあります(参考: 日本褥瘡学会ガイドライン第5版)。ご家族だけで対応しようとすると夜間の負担が大きくなるため、私たちはご自宅の状況に合わせたスケジュールをご提案できます。

体圧分散マットレスや円座クッションの選び方も重要です。円座クッション(ドーナツ型)は仙骨部の圧迫を一点に集中させるため、現在は使用が推奨されていません(参考: 日本褥瘡学会ガイドライン第5版)。正しい用具の選択と使い方を、私たちがご家族と一緒に確認できます。

ベッドのギャッジアップ(頭側を起こす動作)も注意が必要です。30度以上のギャッジアップを長時間続けると、仙骨部にずれ力が生じ、褥瘡リスクが高まります。座位を保つ場合も、姿勢保持クッションや適切な車いすのポジショニングが欠かせません。私たちの訪問看護ステーションでは、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)と協働し、ポジショニングの評価と調整を行えます。


2. 皮膚を守る「スキンケア」の基本と実践

褥瘡予防において、圧迫の除去と並んで重要なのがスキンケアです。皮膚の清潔・保湿・保護の3つが基本であり、日本褥瘡学会ガイドラインでも失禁関連皮膚炎(IAD)の予防とスキンケアが強く推奨されています(参考: 日本褥瘡学会ガイドライン第5版)。

皮膚の湿潤(しめり)環境は、バリア機能を低下させ摩擦への耐性を弱めます。尿や便が皮膚に触れる時間を短くするため、排泄ケアの見直しが効果的です。おむつ内環境を改善する撥水性スキンケアパッドや、皮膚保護クリームの使用は、失禁関連皮膚炎のリスクを有意に下げるというエビデンスがあります(参考: 日本褥瘡学会ガイドライン第5版)。私たちはご自宅で入手しやすい製品を選んでご提案できます。

保湿ケアも欠かせません。特に高齢の方は皮膚が乾燥しやすく、わずかな摩擦でも皮膚が傷つきます。入浴・清拭の後には保湿ローションやクリームを塗布することで、皮膚のバリア機能を維持できます。保湿剤の選び方・塗り方のポイントも、訪問時に一緒に確認できます。

皮膚の観察も日常的なスキンケアの一部です。発赤(ほっせき)・熱感・硬結(こうけつ)が骨突出部(仙骨・踵・肘・後頭部など)に見られた場合は、褥瘡の初期サインです。私たちが訪問のたびに皮膚観察を行い、変化を早期に捉えられます。


3. 栄養状態の評価と改善——褥瘡ケアに欠かせない内側からのアプローチ

「外側のケア」だけでなく、「内側からの栄養」が褥瘡予防・治癒に大きく影響します。低栄養状態は褥瘡発生リスクを高め、治癒を遅らせることが明らかになっています(参考: 日本褥瘡学会ガイドライン第5版、EPUAP/NPUAP国際ガイドライン2019)。

特にタンパク質・エネルギーの摂取不足は、皮膚の再生力を低下させます。体重の変化、食事量の減少、血液検査のアルブミン値などが栄養状態の指標になります。私たちは訪問のたびに食事状況を確認し、必要に応じて管理栄養士や主治医との連携を提案できます。

水分補給も重要です。脱水状態は皮膚の弾力性を失わせ、褥瘡のリスクを高めます。「あまりトイレに行きたくないから水を控えている」という方も多いですが、適切な水分量の確保が皮膚の健康を守ります。私たちはご本人の状態に合わせた水分摂取の目安を、わかりやすくお伝えできます。

亜鉛・ビタミンC・アルギニンなど、創傷治癒に関わる栄養素の不足も見逃せません。これらを補う医療用経腸栄養剤(経口補水液・栄養補助食品)の活用については、主治医と連携しながら検討できます。在宅でもできる栄養改善の工夫を、私たちは一緒に考えます。


Footageの褥瘡ケアへの取り組み

株式会社FOOTAGEが運営する訪問看護ステーションでは、名古屋市を中心とした東海圏で、看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が一体となった多職種チームで在宅療養を支えています。褥瘡ケアにおいても、このチーム体制が大きな強みです。

たとえば、褥瘡が疑われる皮膚の発赤を発見した場合、訪問看護師が状態を評価するだけでなく、理学療法士が姿勢・筋力・移動動作の観点からリスク因子を分析し、作業療法士が日常生活動作(ADL)の視点からポジショニング環境を整えます。「なぜその部位に褥瘡が起きているのか」を多角的に臨床推論し、根本原因へのアプローチを行えます。

私たちはDXツールを活用し、バイタルデータや皮膚の状態変化をリアルタイムでチーム内共有しています。訪問看護師が観察した皮膚所見・写真・処置記録が即座に共有され、次回の訪問者がスムーズに継続ケアを行えます。状態悪化の際も、担当者間での情報の齟齬(そご)なく迅速な対応ができます。

また、24時間対応体制により、夜間や休日に「皮膚が急に赤くなった」「傷から液体が出ている」といった変化が生じた場合でも、電話相談や緊急訪問で対応できます。ご家族が「様子を見ていいのか、すぐ病院に行くべきか」判断に迷う場面でも、私たちが状況を確認してお伝えできます。


まとめ

褥瘡は、一度発症してしまうと治療に時間がかかり、ご本人のつらさだけでなくご家族の介護負担も大きくなります。しかし、正しい知識と継続的なケアがあれば、在宅でも十分に予防と早期対処が可能です。

体位変換・スキンケア・栄養管理という3つの柱を、毎日の生活の中に無理なく組み込むことが大切です。「うちでもできるだろうか」と感じている方も、私たちが一つひとつの手順をご家族と一緒に確認できます。

在宅療養は、医療と日常生活が交わる場所です。私たち訪問看護師は、その場所でご本人とご家族に寄り添い、皮膚の状態から栄養まで、生活全体の視点でサポートできます。褥瘡のことで気になることがあれば、どうか一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。


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