これから訪問看護ステーションの開業を考えている皆さまへ、訪問看護の開業において重要なステップについて、解説していきます。

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1.訪問看護事業所開業方法について『個人開業/FC開業』

訪問看護事業所を開業する方法として「個人開業」と「FC(フランチャイズ)開業」の2つの方法があります。
以下で、それぞれの方法について開設します。

▪️個人開業/FC開業の特徴

「個人開業」と「FC開業」は、事業を始めるための主要な方法の2つです。
これらの選択は、事業のスタートアップ段階での重要な決断となります。
どちらの方法が合っているのか、それぞれの特色を理解することで訪問看護事業所開業の実現に繋がります。

個人開業

個人開業の場合、自らのビジョンや理念をベースに訪問看護事業所を運営することができます。
スタートアップの段階で独自性を持たせながら事業を築き上げる楽しさや、柔軟性が魅力です。
ただし、一からのスタートなので、事業を安定化させるまでには時間と努力が必要です。
特に、訪問看護のような廃業が多い業界では、事業の安定が大きな課題となります。

以下のコラムでは、訪問看護事業の廃業リスクについて詳しく解説しています。
訪問看護の経営と現場の対立、そしてその対策や知識を深めるために、ぜひ参考にしてください。訪問看護の経営と現場の対立について対策と知っておくべきこと

FC開業

FC開業は、実績にあるビジネスモデルをベースに、新規の店舗やサービスを立ち上げるアプローチです。
フランチャイズ元のノウハウやシステムを利用することで、事業の立ち上げ時のリスクを低減できるという大きなメリットがあります。
さらに、フランチャイザーからのサポートや研修が受けられる点も魅力の一つです。
ただし、加盟料やロイヤリティといった経費が必要となること、またフランチャイザーの方針に沿った経営を求められることから、独自の戦略や方針を採用するのが難しい可能性も考えられます。
フランチャイザーによって支援体制が異なるため、加盟前には入念な下調べが必要となります。

個人開業とFC開業の比較では、前者は自由度が高い反面、リスクも大きいと言えます。
一方、後者は安定した形で事業をスタートできるものの、ある程度の制約を受け入れる必要があるという特性を持っています。
どちらの方法が最適かは、自らの目標やビジョン、そしてリスクの許容度に応じて決めることが大切です。

2.訪問看護事業所開業における6つのSTEP

STEP①:開業目的の明確化

開業を決意する際、最も大切なのはその目的を明確にすることです。
開業目的は事業の基盤となり、提供する価値や追求するビジョンを示します。

なぜ開業目的が大切なのか?

  • 方向性の確立
    目的を持つことで、事業所が進め方向性がはっきりとし、進むべき道が明確になります。
  • モチベーションの維持
    困難な時期でも、開業の原点に立ち返り、情熱を持続させることができます。
  • 関係者との信頼構築
    顧客やスタッフと共有された目的は、強固な信頼関係の礎となります。

開業目的の設定方法

  • 自分の価値観を再確認
    何に情熱を感じ、何を重視するかを深く考えます。
  • 市場ニーズの把握
    自らが提供する価値が市場にどれほど求められているかを研究します。
  • 具体性の追求
    抽象的な考えではなく、具体的な言葉で目的を明確に定義します。

事業所開業時、目的の明確化は不可欠です。
自身の価値観と市場のニーズを組み合わせ、具体的な目的を設定してください。

STEP②:法人登記について

法人登記は、新しく企業を立ち上げる際に不可欠な手続きとなります。
訪問看護事業所を開設するための指定申請に際しても、法人としての正式な登記が求められます。

法人登記の意義

  • 法的地位の獲得
    登記を完了することで、法人としての正式な地位が確立されます。
  • 信用の強化
    公式に法人として登記されることで、外部の機関や金融機関からの信頼度が増します。

法人登記の手続き手順

  • 設立の前準備
    会社の定款を整備します。これは、会社の名称、事業目的、資本金などの基本情報を明記するものです。
  • 公証役場への申請
    作成した定款を公証役場に提出し、認証を受けます。
  • 法務局への登記申請
    公証役場で認証を受けた後、法務局に法人登記の申請をします。
    所要の書類や手数料が必要です。

法人登記は、企業設立の基盤となる手続きです。
この登記を通じて、法的な権利と義務を得ることができるだけでなく、ビジネスの信用も向上します。

STEP③:開設エリアの選定に関して

事業所を開業する上で、開設エリアの選定も重要なステップです。
適切なエリアを選択することは、事業の成功確率を高めることができます。

開設エリア選定のポイント

  • ターゲット層の調査
    訪問看護のサービスを求める可能性のある層が、該当エリアにどれくらい存在するのかを分析します。
  • 競合の確認
    エリア内で既に活動している他の訪問看護事業所の数やサービス内容を把握します。
  • 状況と未来予測
    エリアの将来的な変化や地域のニーズを考慮しながら選定します。
    例えば、競合が多くても、24時間365日対応や夜間の定期訪問など、まだ満たされていない地域ニーズが存在する可能性があります。

開設エリアの選定は、訪問看護事業所の成功に向けた大きな要素です。
ターゲットとなる層の分析、競合の存在やエリアの将来予測を踏まえて、事業展開の方向性を決定します。

STEP④:開業に必要なリソース(人材/資金/物件/物品/書類)の確保に関して

開業する際は、様々なリソースを効果的に集める必要があります。
以下、開業の主要なリソースとその集め方について解説します。

人材について

  • 求める人材の明確なイメージを持つこと
    事業のビジョンやミッションを明確にした上で、必要な人材像をしっかりと設定しましょう。
    開業の際は、新しい制度やルールを作り上げる過程を楽しむことができる人材の確保が理想的です。
  • 働きやすい職場環境の構築
    職場の雰囲気や福利厚生、給与体系など、働きやすい環境を整えることや、定期的なフィードバックの機会を設け、スタッフの声を取り入れる仕組みを構築することが大切です。
  • 情熱を共有する
    開業初期は多くの課題が待ち構えています。
    ただの根性論では乗り越えるのは難しいですが、共通の目的や情熱を持つメンバーとなら、困難も共に乗り越えられ、その喜びもひとしおです。

訪問看護事業の成功の鍵は、共にビジョンを追い求めることができる人材を確保することにあります。
心から信頼し合えるチームを結成しましょう。

資金に関して

  • 自己資金の確保
    事業を始めるための基盤となる資金です。
    多くの自己資金を用意できれば、金融機関の融資時に信用が上がり、より有利な条件での融資が期待できます。
  • 金融機関からの融資
    地方銀行や信用金庫からの資金援助を受ける際は、事業計画書を詳細に策定し、アプローチすることが重要です。
    中長期の展望や収益見込みなど、安定した運営を示す要素を提示することが大切です。
  • 助成金・補助金の活用
    新規事業者をサポートする助成金や補助金も利用できます。
    各自治体のホームページなどで情報を収集し、適切な申請を行うことが大切です。
  • クラウドファンディングの利用
    スタートアップの資金調達手段としてクラウドファンディングが注目されています。
    訪問看護事業の社会的意義を伝え、多くの支援者から少額ずつ資金を集めることも可能です。
  • 事業提携や投資家からの資金調達
    事業のビジョンに共感する企業や投資家からのサポートも視野に入れることができます。
    信頼の築き上げが不可欠です。

訪問看護事業の資金集めには、様々な選択肢があります。
事業の方向性や規模に応じて、適切な資金調達手段を選定しましょう。

物件について

  • 立地の選定
    訪問看護事業では、アクセスしやすい立地が非常に重要です。
    主要交通機関からのアクセスや、駐車場の設備が良い場所は、訪問ルートや採用活動にも好影響を与えます。
  • 事業のスケールと合わせた広さ
    初めは小規模からスタートする場合でも、将来の事業拡大を見越して物件の広さを選ぶのも方法の一つです。
    しかし、初期費用を抑える意味で最初は、コンパクトなスペースから始めるのも一つの戦略です。
  • 周辺環境
    物件の近くの治安や、コンビニまでの距離など、働くスタッフにとって快適な環境を提供する場所を選びます。
  • 現地の確認
    物件の設備や状態は、直接現地を訪れて確かめることが大切です。
    周辺の騒音やセキュリティ対策も確認ポイントです。

訪問看護事業を立ち上げる際の物件選びには、多角的な視点からの検討が必要となります。
立地、広さ、設備、そして環境といった要素を総合的に考え、最適な選択を心がけましょう。

物品について

  • 必要な物品の整理
    訪問看護には特定の医療器具や消耗品が必要です。
    バイタルサイン計測器具、使い捨ての手袋やガーゼ、清潔を保つためのアルコール消毒液など、日常的に使用する物品をリストアップしましょう。
  • 在庫管理
    物品が不足しないよう、常に適切な量の在庫を確保するための管理体制を整えることが重要です。
  • コスト管理
    物品購入は経費になるため、効率的なコスト管理が求められます。
    一括購入での割引や、長期の取引による価格交渉など、経営の側面からも最適な方法を検討しましょう。
  • 定期的な機器のメンテナンス
    医療器具は定期的なメンテナンスが必要です。
    故障を防ぎ、患者へのサービス品質を保つため、メンテナンスのスケジュールを確立しておくことが大切です。

訪問看護開業における物品の確保は、業務の質を保つ上で欠かせない要素です。
コストや在庫の管理に至るまで、計画的に進めることでスムーズな業務運営が期待できます。

書類について

  • 訪問看護サービスの提供や事業所運営に必要な書類の例
    ・管理記録(事業日誌、職員の勤務状況・給与・研修等に関する記録、月間・年間の事業計画表、事業実施状況表)
    ・市町村等との連絡調整に関する記録
    ・利用者との契約に関する書類(契約書、重要事項説明書、個人情報使用同意書、利用料金表等)
    ・指定訪問看護に関する記録(訪問看護記録書、訪問看護指示書、訪問看護計画書、訪問看護報告書、市町村等に対する
    情報提供所(医療保険)等)
    ・会計経理に関する記録
    ・設備/備品に関する記録
    ・運営規程(事業の目的・運営の方針、従業者の職種・員数・職務内容、営業日・営業時間、指定訪問看護の内容及び利
    用料その他の費用の額、通常の事業の実施地域、緊急時等における対応方法、その他訪問看護ステーションの運営に関
    する重要事項)
    ・事業所のパンフレット
    ・訪問看護サービス提供のための各種マニュアル
  • 会社運営に必要な規程の例
    ・組織諸規程(個人情報保護規程、旅費規程、学会・研修会参加規程、慶弔見舞金規程、福利厚生に関する規程、車両管
    理規程、防災防火管理に関する規程)
    ・人事諸規程(就業規則、育児休業規程、介護休業規程、再雇用規程、給与規程、退職金規程、人材評価規程)
    ・業務諸規程(感染症に関するマニュアル、交通事故に関するマニュアル、クレーム対応マニュアル)

訪問看護を開業するために、準備が必要な書類が上記になります。
指定申請先のHPに見本書類が準備されていたり、訪問看護事業所向けの電子カルテを導入することでスムーズな書類作成が可能になります。

STEP⑤指定申請について

  • 指定申請の必要性
    訪問看護事業所としてサービス提供を公式に開始するためには、「都道府県知事」又は「市長」に指定申請が必須です。この認可がないと、事業所としての活動は認められません。
  • 必要な書類の準備
    指定申請には、事業計画書や資格を証明する書類、事業所の設備やスタッフの情報など、様々な書類が必要となります。申請先によって必要書類が異なることがあるため、詳しくは指定申請の手引きを参照してください。
  • 申請手続き
    必要な書類をそろえたら、窓口に足を運び担当者と複数回面談を行います。
    一般的には、書類審査の後、審査が行われ、その結果に基づいて指定を受けることになります。
  • 加算届出や指定機関申請
    事業所の指定申請手続きが終了した後に、医療保険における加算を取得する場合に加算届出や生活保護法、自立支援医療機関の指定なども必要に応じて行います。
  • 損害賠償保険の加入
    利用者やその家族等の第三者に怪我や物損を与えてしまった場合、賠償責任を補償するために、損害賠償保険への加入が義務付けられています。

開業する際は、事業所の運営を公式に行うために指定申請手続きが必要です。
指定申請を行い、認可を受けることで初めて訪問看護サービスを提供することが可能となります。
必要に応じて加算届出や指定機関申請、損害賠償保険の加入も必要です。

STEP⑥営業について

  • 地域特性を理解する
    訪問看護のサービスは、地域特性から影響を受けるものです。営業活動を開始する前に、サービス提供エリアの実情や地域のニーズをしっかりと理解することが重要です。
  • 信頼関係の構築
    医療・福祉関連のサービス提供において、信頼関係は最も重要な要素です。遅くても開設の2ヶ月前から地域の関連機関との連携を深めることで、開設当初から訪問看護師としての役割を発揮することができます。
  • 質の高いサービスの提供
    関連機関との連携が行えていると高品質なサービスを一貫して提供することが可能です。事業所の評価が上がり、地域に必要とされる存在になっていきます。

開業前の営業活動は、チームで行う在宅医療にとって信頼関係を構築するための重要な活動の一つです。
在宅医療で中心的な役割を担う訪問看護だからこそ、他職種との繋がりを造ることが大切になります。

3.訪問看護開業に関するまとめ

今回の記事では、訪問看護開業に関連する様々な要点について解説しました。
訪問看護開業においては、私達も様々な課題と向き合いながら進んできました。
あなたの情熱と専門性が、多くの人々の笑顔に繋がることを心より願っています。

最後になりますが、
下記リンクから、Footage訪問看護ステーションで開業の際に活用しているチェックリストの一部がダウンロード可能ですので、ご自由にご活用くださいませ。

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