1.はじめに

前回のコラムでは、訪問看護ステーションが営業戦略を立案する方法について詳細に説明しました。
フレームワークを活用して営業戦略を管理することで、より具体的で実効性のある戦略が形成されます。
ぜひ、前回のコラムもご一読いただければと思います。

訪問看護ステーションが営業戦略を立案するのに必要な6ステップ

今回のコラムでは、Footage訪問看護ステーションが実際に行っている営業活動についてご紹介します。
前回ご紹介したステップに沿った形で、詳しく説明します。

2.Footage訪問看護ステーションの営業活動の実際

▪️営業活動の目的「目標の設定」(Why)

Footage訪問看護ステーションでは営業活動において、全社一丸となって取り組むための「定義」「行動優先順位」「見本態度」を文書、図表、データなどを通じて体系的にまとめています。

定義

Footage訪問看護ステーションでは、営業活動を「地域連携活動」と定義しています。
地域連携活動とは、醸成を促す活動であり、醸成すべき対象は3つ存在します。

  1. 顧客との関係性醸成
  2. 顧客の課題理解醸成
  3. 顧客のFOOTAGEへの理解醸成

ここで指す顧客とは、利用者やその家族だけでなく、医師、病院、ケアマネジャーなど地域包括ケアシステムで活躍する他職種の方々、また、採用に応募した方や事業所を見学に来ていただいた方々など、FOOTAGEと関わりを持つ可能性がある全ての人々を含みます。

仕事の優先順位

訪問看護の業務における優先順位について、皆さんはどのように考えていますか?
「訪問業務が最も重要だ」「スタッフの教育が一番大切ではないか」など、価値観によって答えは異なるでしょう。
頭に浮かんだことはどれも大切な要素だと思いますが、所属するメンバーの間で方向性が揃わないと、行動化が遅くなり、重点を置くべきことに注力できない、取り返しのつかない状況に陥る可能性があります。
そのため、Footage訪問看護ステーションでは仕事の優先順位を明確にしています。
優先順位については以下の通りです。

  1. 訪問業務
  2. 地域連携活動
  3. 採用・育成
  4. プロジェクト・チーム活動・勉強会

全てが重要な要素ではありますが、この順序が入れ替わると、健全な事業運営が難しくなってしまいます。
本来ならば、採用・育成関連の業務を地域連携活動よりも高い優先順位に置きたいのですが、訪問看護のストックビジネスという側面を考慮すると、地域連携活動が高い優先順位を持たなければ売上を上げることができません。
事業所の内部環境がいかに良くても、賞与などの報酬を支払えない、スタッフの待遇を保てないという状況では、事業の継続は難しくなります。
また、看護師は職人とも言え、自分の仕事に対する満足感に強くこだわっています。
看護の提供ができない状況は、何よりもストレスが高く、職人としての尊厳を脅かすことに繋がります。

見本態度

「会社に所属するメンバー全員が等しく地域連携活動を行なっている」という前提のもと、それぞれが活動を推進していくことは、組織として重要な態度と定めています。

  1. 顧客との関わり方:本音で言い難いこともしっかり伝え、想いに寄り添い後押しする。感動や満足を常に考える。
  2. 顧客視点を持つ:顧客が本当に困っていること、求めているもの、解決したいことは何かを考えて行動する。
  3. 価値について考える:どのような価値があるのか、十分な価値提供ができているのかを考える。
  4. 利益について考える:社会的な意義と売上のバランスを取りながら、事業の活動のための原資を生み出す。

この視点を大切にし、顧客との接触時にメンバーが保つべき態度として規定しています。
それが結果として顧客の利益や成長につながると定めています。
この姿勢を共有することで、大きなズレなく方向性を保ち、営業戦略の設定が可能となります。

「定義」「行動優先順位」「見本態度」を明確にすることで、営業への取り組みや視点に変化が見られ、徐々に適応していくことが可能になります。

▪️効果的なタイミング「機会の選定」(When)

前回のコラムでは、定期的なコミュニケーションや時間の確保を容易にするための調整について触れました。

今回は、営業活動が実施されてから結果が得られるまでには時間的なズレが生じるという点を共有します。
このズレを理解して行動することで、事業運営の損失を最小限に抑えることが可能となります。

営業活動は、認知の獲得、関係性の構築、課題の理解、理解の醸成というプロセスを経て、顧客からの信頼を得ることができます。
この信頼関係が築けて初めて、新規の相談依頼に繋がります。
すでに信頼関係を築いている顧客でなければ、すぐに新規の相談依頼を得ることは難しいです。
したがって、「業務状況が悪いから地域連携活動を行う」では、前述のプロセスを踏むことができず、行動が遅れてしまうのです。
具体的には、営業活動の効果が見込まれるまでには約2ヶ月程度の期間が必要とされます。
そのため、採用計画や運営計画に基づき、必要な利用者規模の推移を予測し、地域連携活動に注力すべき時期を予め把握しながら営業戦略を管理しています。

また、機会損失を防ぐために、業務の中にフィードバックの機会を組み込んでいます。
定期的なフィードバックの機会を設けることで、忙しい時期や閑散期などの状況に左右されることなく、どのような状況でも安定してフィードバックを行うことが可能な仕組みを作り上げています。

事業所会議レポート

▪️ターゲット選定「対象者の選定」(Who)

対象者の選定においても、優先順位を設定しています。
事業所の状況によって優先順位が変動することもありますが、基本的には以下の優先順位で対象者の選定を行っています。

営業活動先の優先順位

  1. 地域医療支援病院や郡市区医師会などの地域医療の発展や充実を図る機関
  2. 1からの情報で抽出された機関
  3. 病院
  4. 訪問診療
  5. 障害相談支援事業所、基幹センター
  6. 居宅介護支援事業所
  7. 訪問看護事業所

地域医療支援病院や郡市区医師会など、地域医療の発展と充実を目指す機関を訪問し、該当地域の医療情報を収集します。
また、これらの場所から訪問看護部会などの地域のネットワーク情報を得て、地域連携のきっかけを創出します。

病院や訪問診療のリストを作る際は、日本医師会が運営している1)地域医療情報システムJMAPの施設別検索機能を活用し、地域包括診療や在宅療養支援を担当する該当地域の医療機関をリストアップします。
また、居宅介護支援事業所をリストアップする際は、厚生労働省が運営している2)介護事業所・生活関連情報の検索機能を利用し、該当地域からリストアップを行います。

リストアップした上で、

  • 連携実績の有無
  • 前回訪問時のご様子
  • 訪問業務との導線

上記の要素を考慮し、当日の予定を管理します。

▪️コミュニケーション方法「コミュニケーション手段の選定」(How)

Footage訪問看護ステーションでは、直接的な営業活動を行う際の要点や、事業所の特性、会話例や情報共有の方法などを体系的にまとめています。全てのスタッフが営業活動を行え、その心理的な障壁を低減する役割を果たしています。
また、直接的な営業活動以外にも、地域の皆様に事業所を知っていただく活動も積極的に行っています。
地域の施設で開催されるイベントへの参加や、地域包括ケアシステムのパートナーと共同でイベントを開催し、地域住民の皆様に在宅医療に触れる機会を提供するとともに、自分たちの役割を再認識する機会も設けています。

3.まとめ

今回のコラムでは、Footage訪問看護ステーションの実践している取り組みの一部を紹介しました。
他にも多くの取り組みを進めています。
詳細について興味のある方は、ぜひ一度お問い合わせください。

参考サイト:1)日本医師会,JMAP地域医療情報システム
2)厚生労働省,介護サービス情報公表システム,介護事業所・生活関連情報検索