はじめに
これから訪問看護事業所の開業を考えている皆さまへ、 訪問看護事業所開設に必要な初期投資について解説していきます。
コチラからアンケートにお答え頂くことで 訪問物品準備チェックリストを送付させていただきます。
以前掲載したコラムで、訪問看護事業所の事業計画作成について紹介していますので、そちらも合わせてご覧ください。経営支援コラム:【テンプレート付】訪問看護事業所の事業計画作成
新規事業を立ち上げる際に多くの経営者が直面する問題の一つが「初期投資」です。
初期投資とは、事業開始のために必要な一連の資金を指し、事業が安定するまでの運転資金も含まれます。
ここでは、訪問看護事業における実際の初期投資の種類について解説します。
初期投資の種類について
訪問看護事業所を開設する際の基礎となる資金が初期投資です。
事業計画を作成する上で、物件や設備投資、運転資金など、事業開始に必要な全ての費用を明確にし、これらの費用の正確な見積もりを作成しなければ、資金調達を行うことが困難です。
適切な資金調達により、事業のスムーズな運営が可能となり、それが結果的に事業の成功に大きく貢献することになります。
①物件関連費用
新規事業を開始する際、オフィスや店舗、工場などの物理的なスペースが必要になることが一般的です。
これには、購入または賃貸するための費用や、改装や内装に関する費用が含まれます。
訪問看護事業では、事業所としてマンション、一軒家、テナントなどを資金や目的に応じて準備します。
訪問看護事業所の開設時には、指定申請を行う際に必要な机や鍵付き書庫などの物品を準備することが基準とされています。
地域によって異なりますが、例えば名古屋市で事業所を開設する場合、開設の2ヶ月前には申請を完了させる必要があります。
その際、基準とされている物品が配置された事業所の図面の作成や、事業所の内外装がわかる写真を撮影して添付することが求められます。
このため、少なくとも2ヶ月間は事業活動を行っていない状態で物件関連費用が発生します。
この間の物件関連費用を抑えるために、フリーレントの交渉を行うことが効果的です。
- 物件:家賃8万円/月の賃貸として、契約費用5ヶ月分+前家賃1ヶ月分と想定 8万円×6ヶ月=48万円
- 駐車場:駐車場費1万円/月の賃料として、契約費用2ヶ月分+前家賃1ヶ月分、4台分と想定 3万円×4台=12万円
②設備・備品投資費用
設備・備品投資費用には、事業運営に不可欠な機械、コンピューター、ソフトウェア、オフィス家具などの購入費が含まれます。
これには、購入に直接かかる費用だけでなく、配送や設置に関わるコストも含まれることがあります。
訪問看護事業を開設する際に必要な主な設備・備品は以下のとおりです。
- 訪問サービスに必要な訪問物品
- 事業所運営に必要な事業所物品
- 訪問車両やPC、電子カルテなどの設備
1.訪問物品
訪問バックは1個約5万円で準備することが可能です。
肩掛け、手持ち、リュックタイプなど種類も多岐にわたります。
訪問を行う職員の職種によって必要な物品が異なるため、選定には注意が必要です。
看護師であれば、聴診器や駆血帯、セラピストであれば、ゴニオメーターや打診器など提供するケアに合わせて準備をしましょう。
2.事業所物品
事業所の初期設備や大きさ、物品メーカー等によって大きく変動はしますが、約50万〜100万円で準備することが可能です。
プリンタ複合機(FAX付き)のような業務効率に影響するものや、冷蔵庫などのスタッフの過ごし易さに関わる物品に関しては、機能性や大きさなど良いものを準備されることをお勧めします。
3.設備
PCやタブレットなどの購入費用や電子カルテ、勤怠管理ソフト等のソフトウェア、電話、ネット回線等の設置費用が必要になります。
PCやタブレットなど選択されたものによって費用は異なりますが、作業効率などを考慮すると1人1台PCを準備されることをお勧めします。
電子カルテやソフトウェアとの連動性や費用、業務効率等を加味して選択しましょう。
弊社では、ソフトウェア費用として(会計、労務管理、勤怠管理、経費管理、コミュニケーションツール)約3500円/名、電子カルテ費用として2万5000円で準備しています。
- 訪問物品:訪問バックをスタッフ4名分準備と想定 5万円×4名分=20万円
- 事業所物品:100万円
- 設備:ソフトウェア費用3500円/名、4名分 3500円×4名分=1万4000円
電子カルテ費用2万5000円20万円+100万円+3万9000円=124万
設備・備品投資費用として、合計で125万円程の費用発生が想定できます。
③顧問契約・業務委託費用
会社設立に際して、司法書士による設立登記や、事業開始に向けての社会保険労務士、税理士、公認会計士との顧問契約などにより費用が発生します。
最初からこれらの専門家との顧問契約を結ぶことで、事業開始初期から事業拡大に向けた健全な運営を目指すことが可能です。
ただし、事業開始当初はこれらの契約料を捻出するのが困難な場合も考えられます。
従業員の採用や事業拡大のタイミングに顧問契約を検討するのも一つの方法です。
費用は事務所によって異なるため、具体的な金額については各事務所に直接お問い合わせください。
④人件費・採用費
事業開始前および直後には、必要な人員の雇用にかかる費用が発生します。
訪問看護ステーションを開設する際には、看護職員(保健師、看護師、准看護師)を常勤換算で2.5名以上確保する必要があり、実質的には最低3名の看護師の採用が必要です。
訪問看護業界は人材の確保の難易度が高い業界ですが、人材は自社ホームページや求人サイト、社員からの紹介(リファラル採用)、人材紹介業者を通して募集します。
下記画像を参照すると、有料人材紹介を活用した人材獲得が多くなっています。ホームページや求人サイトを効果的に活用することで採用費を抑制することは可能ですが、人材紹介業者をメインで活用した場合の人材獲得に必要な費用は常勤看護師1名あたり120万円を超える場合が多く、スタッフの全員を有料人材紹介会社で集める場合には、少なくとも360万円の費用がかかることになります。
⑤広告宣伝費
訪問看護事業所を新設するということは、特定の地域における在宅医療領域で新たに認知を獲得し、販路を開拓していくことと同義です。
販路拡大のためにも、自社ブランドの特色を市場へ認知して貰う必要があります。
ウェブサイトの作成、SNSでのプロモーション、広告媒体への掲載、パンフレット制作、地域イベントへの参加費など、販売促進に係る費用が必要となり、これが広告宣伝費となります。
広告宣伝費を適切に支出することで、サービスのコンセプトが明確に伝わったり、デザイン性の高い広報媒体を用いることで効果的な販売促進活動が可能になる場合がありますが、広告宣伝費は多額の支出となりやすいため、広告によって達成したい目標を明確にし、広告の費用対効果については常に注意する必要があります。
また潤沢な資金がある場合を除き、開設初期には広告宣伝費を掛けずに販売促進活動を展開することも重要であるため、広告に頼らない営業活動を展開することも同時に考えると良いでしょう。
⑥保険料
事業運営を継続するためには適切なリスクマネジメントが求められます。
サービス提供等にあたって発生しうるリスクに関して適切に評価し、保険に加入すべきかも判断すると良いでしょう。
地震・火災・車両事故・医療事故などに対応する保険があります。
訪問看護事業は、自宅や施設への訪問でサービスを提供することから、事業者や従業員が訪問中に利用者やその家族に怪我を負わせたり、利用者の物品を損壊する可能性があります。
弊社ではそのような場合に発生する損害賠償責任に備えるため、訪問看護事業共済会が取り扱う訪問事業者総合補償制度を利用しており、コチラの保険は1事業所あたり年間1万円から加入できます。
初期投資及び運転資金を踏まえた開業資金の目安
①初期投資について
訪問看護事業所を新たに開設する場合に必要な初期投資ですが、上述の説明を踏まえると546万円となります。
但し費用の大部分は人材紹介会社経由での採用費となっていますので、リファラル採用や効果的な求人媒体の運用を組み合わせることで、大きく削減する事が可能です。
後述しますが、訪問看護の事業運営に係る費用の大部分は削減不可能な人件費となりますので、初期投資を抑えることは非常に重要な観点となります。
②運転資金について
事業開始後、収益が安定するまでの人件費や日常の運営費などをまかなうための流動的な資金を「運転資金」と呼びます。
訪問看護事業は保険事業の特性上、売上が実際に振り込まれるまでに2ヶ月の時間的なズレが生じるため、開設月から2ヶ月間は銀行口座に入金はありません。
さらに、売上が単月黒字となる目安は開設から5ヶ月程度必要な場合が多いと思われるため、最低でも6ヶ月分の運営費用を賄えるだけのの運転資金を準備する必要があります。
③開業資金の目安
以下は弊社のフランチャイズ事業の提案書に掲載している事業計画の一例です。
これらの理由により、訪問看護事業を開始する際は、準備資金として1500万円〜2000万円程を目安に用意して頂くよう提案しています。
訪問看護開設に関するその他の情報が掲載されている、資料のダウンロードが可能です。コチラから訪問看護経営支援ご提案書 無料ダウンロード
今回の記事では、訪問看護事業所開設に必要な初期投資について詳しく解説しました。
訪問看護の開業を考えている方々に、この情報が役立つことを願っています。
コチラからアンケートにお答え頂くことで 訪問物品準備チェックリストを送付させていただきます。
皆さまへの
コメント
Footage訪問看護ステーションで蓄積してきたナレッジを共有し、訪問看護ステーション運営の助けとなりたい。
課題や葛藤を共有しながら一緒に解決していく仲間を増やすことで、地域医療を支える仲間が、誇りや働く意義を持って、訪問看護に専念できる環境を作りたい。