こんにちは。Footage訪問看護ステーション覚王山の水野です。
私は仕事の傍ら、独学で英語や外国語の学習に日々奮闘しています。
最近はNCLEXの勉強をゆるーく時間を見つけては取り組んでいます。
Footageではこの時期は入職希望者への会社説明や同行訪問、看護学生の実習の受け入れで職場が賑やかな状態になっています。
実習生と関わっていると”あ~自分もこんな時あったなあ~”って懐かしい気持ちになります。
看護学生含め医療系の資格試験は2月に実施されるためこの秋冬は試験前の一番重要な時期です。
懐かしい気持ちで国家試験の試験問題を眺めていると、今自分が勉強しているNCLEXとは全然問題の内容や形式が違うなあ~って思うことがたくさんあります。今回はアメリカと日本の看護師免許の取得の違いについてご紹介できたらなと思います。

◯看護師になるまでのカリキュラムの違い

まずそもそもで看護師にはどうやってなるの?っていうところから説明していきます。

日本の看護師になるには

看護師を目指す者は、看護師養成教育機関に入学する必要があります。
3年間の専門学校か、4年間の大学の専門カリキュラム(座学と臨地実習)を修了した後、国家試験に合格することで看護師の資格を取得できます。また、この資格は一度取得すると永久に保持が可能で、資格に更新は必要ありません。

アメリカで看護師になるには

以前別のコラムでも説明しましたが、アメリカは看護職の職種の区別がいくつかあります。そのため一般的な登録看護師:Registered Nurse (RN) になるためには、Associate Degree in Nursing (ADN:短大卒レベルの看護師) または Bachelor of Science in Nursing (BSN:4年生大学卒業レベルの看護師) プログラム資格を取得する必要があります。
どちらの場合であってもプログラム卒業後に、NCLEX-RNという国家試験を受験し、合格すればRNのライセンスを取得できます。アメリカのRNの資格は2年毎の更新が必要です。
私の義母はアメリカで看護師をしていたので、日本の看護師は資格の更新がないことにとても驚いていました。

 

 

◯国家試験:受験資格や会場についての違い

 

日本の看護師国家試験

まず受験資格ですが、日本では卒業資格があるということで受験することができます。そのため4年生で実習を終えて落ち着く間も無く国家試験を受けて卒業後すぐに就職して働くというのが基本的なスタイルですね。
日本の看護師国家試験は年1回、勝負は一度きりです。
一度落ちてしまうと来年受験という形になってしまいます。また受験会場の指定があり、定の場所で1日かけて実施します。

アメリカの看護師国家試験

受験資格についてですが、アメリカは卒業してからでなければNCLEXの試験は受験できません。
そのため、卒業後に少しゆっくりしたり時間を空けてから試験対策に取り組み、受験という方もいるようです。受験会場については指定はなくパソコンでオンラインの試験を受けます。
アメリカのNCLEXの試験は州によって違うみたいですが最大8回/年受験できます。2ヶ月に1回以上開催されてます。

 

◯国家試験の違い:試験内容についての違い

試験内容については実際の問題を紹介しながら説明していきます。

●日本の看護師国家試験内容

看護師の国家試験は主に「必修問題」「一般問題」「状況設定問題」の3部構成です。全部で240問あります。このうち必修問題は8割以上正答しないと問答無用で不合格になります。また問題は選択式です。
似たような内容でないと比較が難しいと思ったので、今回は適当に考えて浮かんだ”卵巣がん”で検索した国家試験問題を挙げます。
みなさん解いてみてください!

第100回 午後61問

卵巣癌の特徴はどれか。次のうち正しいもの1つを選べ。

  • 1. 20歳代での発症が多い。
  • 2. 初期の段階では無症状の場合が多い。
  • 3. ホルモン療法には腫瘍縮小効果がある。
  • 4. ヒトパピローマウイルス感染が関与している。

一応答えを載せておくと、答えは②です。これは一般問題に出題される内容ですが、基本的に疾患の特徴だったり、解剖的な構造について当てはまるものを選択する感じです。問題文自体も割と短く端的に書いてあります。状況設定問題では患者の年齢や病歴や検査値などを書いてあるので少し文章は長めに感じますが一問一答形式です。どちらかというと知識を重視した問題が多いような印象です。

第104回 午後52問

Aさん(48歳、女性)は、卵巣癌の腹膜播種性転移で亜イレウス状態になった。栄養療法のために、右鎖骨下静脈から中心静脈カテーテルの挿入が行われたが、鎖骨下動脈を穿刺したため中止された。処置直後の胸部エックス線撮影で異常はなかったが、4時間後、Aさんは胸痛と軽い呼吸困難を訴えた。最も考えられるのはどれか。

  • 1. 血 胸
  • 2. 肺 炎
  • 3. 肺転移
  • 4. 胸膜炎

一応答えを載せておくと、答えは①です。

●アメリカ看護師国家試験内容

アメリカの看護師試験はCATと呼ばれるコンピューターが受験者の出来高を判定しながら出題する問題のレベルを調整するというシステムを導入しています。
年によって変化はありますが、問題数は最低60問、最大145問出題されます。
また出題数は受験者によって問題を解く量が変わってきます。
過去に受験した人の話を聞いたことがありますが、昔は100問程度だったよ~という人もいれば200問解いたよ!という人もいます。
コンピューターが受験者の出来具合を見て、合格か不合格か判断できる材料が揃うまで問題を解き続ける仕組みです。
ただ、日本の試験とは違い休憩を好きなタイミングで取れるので時間内に解き切らなければいけないといった時間への焦燥感はないそうです。こちらも適当に卵巣がんで検索した国家試験問題を挙げます。みなさん解いてみてください!(ちょっと文章的に長いので1問だけ掲載します。)

Q1

A client diagnosed with ovarian cancer asks the nurse,
“How is it possible the cancer is metastasized? I just found out I have cancer.” How does the nurse respond?
(訳:卵巣がんと診断を受けた患者が看護師に質問しました。”どうしてこの癌が転移してしまったの。私はたった今癌があることを知ったのに” これに対して看護師はどのように反応しますか?)

  • 1  “You likely ignored the signs due to fear of diagnosis. If you think back, you will likely discover the signs of ovarian cancer were present.”
    (訳:あなたはおそらく診断を恐れてその病気の兆候を無視したのでしょう。振り返ってみると、卵巣がんの兆候があったことに気づくでしょう。)
  • 2 ”Most cancers have metastasized by the time of initial diagnosis, so this is not unusual. It should not complicate your treatment.”
    (訳:ほとんどの癌は最初の診断の時点で転移しているため、これは珍しいことではありません。治療が複雑になってはいけません。)
  • 3 ”It is likely you have had the cancer for a long time. Ovarian cancer produces vague symptoms that are often not investigated.”
    訳:おそらくあなたは長期間にわたってがんを患っていた可能性があります。卵巣がんは漠然とした症状を引き起こしますが、多くの場合精査されないことが多いです。
  • 4 ”Because it had been several years since your last Pap smear, the opportunity to diagnose the cancer early was missed.”
    訳:前回の子宮頸部細胞検査から数年が経過していたため、癌を早期に診断する機会を逃してしまったと考えられます。

いかがでしょうか???
ちなみにこちらの答えは③です。
卵巣がんの特徴を熟知していることは前提でそれをもとに患者にどう説明するかというところが問われています。
このようにアメリカの看護師試験では選択問題のみでなく、様々な出題形式があります。
他の例ですが、患者さんの状態が書かれた文章を見て優先順位を考える問題や選択問題でも1つを選ぶのではなく当てはまるものを全て選んだりする問題も出ます。
試験問題の大きな違いは、日本では知識重視、アメリカでは知識を元にした行動を重視した問題が多かったように思います。

◯国家試験の違い:合格率について

最後に気になる合格率です。
看護師の合格率は国が違えば違うのでしょうか。

●日本の看護師国家試験合格率

日本では今年2023年度の看護師国家試験の合格率は90.8%でした。受験者数=64,051人に対して合格者数は58,152人だったそうです。 (図:厚生労働省 第109回保健師国家試験、第106回助産師国家試験及び第112回看護師国家試験の合格発表)

 

●アメリカの看護師国家試験合格率

全国看護委員会評議会によると、現在の2023 年の国家評議会免許試験 (NCLEX) の全国平均合格率は 68.23 %です。2023年の試験は現在も進行形なので変動する可能性があります。

 

(図:NCBSN合格率 https://www.kaptest.com/study/nclex/nclex-pass-rates-what-you-need-to-know/ から抜粋)

詳しくは記載していないですが、日本の看護師の新卒者と既卒者では合格率が大きく異なります。 看護師国家試験の場合、新卒者の合格率が95%以上なのに対して、既卒者の合格率はその半分以下の40%程度と大きく低下しています。またこれもアメリカでも同じで、上の表では大学卒業後に初回で受けた試験での合格率は87%であるのに対して再受験での合格率は48%になります。

いかがだったでしょうか?
一概に同じ職種でも国が違えば資格取得までの学習プロセスや問題内容なんかも結構違いますね。
今後も海外の情報などをどんどん発信していきますので是非チェックしてください!
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