今回は「睡眠」についてお話します。

睡眠の質については、よくメディアでも取り上げられ、
睡眠の質を高める商品などもたくさん売り出されています。

訪問の際に「眠れていますか?」と質問すると

「いろいろ試してはいるけど、なかなか眠れない」
「なかなか寝付けない」
「目が覚めて何度もトイレにいってしまう」

とお声が返ってきます。
日中の生活にも影響が出ており、ご苦労されている方もいらっしゃいます。

Footageに関わる全ての人に対して掲げている目標に
「笑顔のある、あなたらしい人生を」
という言葉があります。

睡眠不足になると生活の質が落ちてしまい、とても笑顔ではいられないですよね。
また日中に眠気を引きずってしまうと、やりたいこともできなくなってしまいます。
私自身、睡眠で良く悩むことがあり、眠れないことの辛さが身に染みて分かります。
また、コロナ禍においては、睡眠の質を上げて免疫力を高める必要もあるかと思います。

そんなとても大切な睡眠について、今回はお話ししていきます。

厚生労働省が発表している
「健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~」
をご存知でしょうか?

その12箇条とは、
1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。

2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。

3. 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。

4. 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。

5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。

6. 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。

7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。

8. 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。

9. 熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。

10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。

11. いつもと違う睡眠には、要注意。

12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

みなさん、どうでしょうか?
簡単そうに見えて、案外行動には移せてはいないのではないでしょうか。

 

特に私が皆さんにぜひとも実践してほしい内容を
2つお伝えしたいと思います。

1つ目は
5:年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。

個人差はありますが、日本の成人の必要な睡眠時間は6時間以上8時間未満と言われています。
必要な睡眠時間は人それぞれで、睡眠時間は加齢と共に徐々に短縮されます。
なので、一般的な睡眠時間に囚われず、日中に眠気で困らない程度の自然な睡眠が一番だとされています。
〇時間眠らなくてはいけないとは思わないようにすると良いです。

2つ目は
10:眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。

眠たくないのに無理に寝ようとすると、かえって緊張を高め、眠りへの移行を妨げます。
不眠を経験し、「今晩は眠れるだろうか」という心配を持ち始めると、緊張が助長されてさらに目が覚めて眠れなくなってしまいます。
時間を気にしすぎてしまうのもあまり良くないため、時計は見えないようにしておくのが良いそうです。

また、寝床での睡眠とは関係のない行動は避けたほうが望ましいと言われています。
寝床でスマホをいじったり本を読んだりするとその習慣がついてしまい、それも不眠の原因になります。
寝床で悩み事などが浮かんで眠れないというのも、寝床は悩むところだと頭が学習してしまっている可能性があります。
寝床は睡眠を取るためのものだと体に覚えさせることも睡眠の質を高めることに繋がります。

 

健康づくりのための睡眠指針2014でも取り上げられている、一般的に睡眠の質を高めるエビデンス(科学的な根拠)があるものも紹介します📢

日中は適度な運動を心がけると良い

・寝る前にはメディア(スマホやテレビなど)の刺激は避けたほうがいい

・寝酒はむしろ睡眠の質を低下させる

・寝る前にカフェインは取らない

・可能な限り昼寝は避け、どうしても眠い時は15時前の20~30分の昼寝に留める

・毎日眠る時間と起きる時間は同じにするように心がける

などがあります。

もし、できていないという方がいましたら是非今日から気をつけてみてください。

※厚生労働省のHPにこの「睡眠12箇条」について詳しい解説があります。
睡眠でお悩みの方、睡眠の質をあげたい方には大変ためになる内容ですので、一度目を通してみることをお勧めします!https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html

不眠の症状の中には病気が隠れていることがあります。
ただの不眠だと思っているそこのあなた・・・実はそれは病気かもしれません。

代表的疾患と症状は、
うつ病
 理由のない不安感・倦怠感・悲哀感・不眠・自律神経症や不安などが伴う

睡眠時無呼吸症候群
 睡眠中の激しいいびきがある

レストレスレッグス症候群
 就寝前の足のむずむず感や熱感

周期性四肢運動麻痺
 睡眠中の足のピクつき

顎関節症、頭痛
 睡眠中の歯軋り

上記のような症状が見られた時はかかりつけ医や睡眠外来などを受診して相談することをお勧めします。
また、トイレに頻繁にいくために眠れないという方もよくいらっしゃいます。
循環器系の疾患で内服などをされている方はどうしても夜間排尿が起きてしまう方もいますが、中にはに泌尿器の疾患が隠れている方がみえます。
受診をきっかけに不眠だけではない自身の病気のサインに気付けるかもしれません。

不眠がある時の受診行動の研究として、以下のような結果が出ています。

不眠の受療行動の国際比 較を見ると、日本では受診が10%以下にとどまり、
アルコール飲用が30%で、他の国々に比べアルコールが不眠解消の第一対処法となっていることがわかります。
保健医療科学 2012 Vol.61 No.1 p.29-34 アジアにおける睡眠医療の現状と展望より

日本では不眠を自分でなんとかしようと思われる方が多いようですが、
上記で述べたように、病気の症状として発症している場合もありますのでご注意ください。

また、利用者様の中には病気の症状として呼吸苦や倦怠感などからどうしても眠りが浅くなってしまう方がいます。
そのような方には主治医の先生に相談して、眠剤の内服などの対処療法を行うこともあります。

 

上記の疾患の症状には当てはまらないし、受診するほどではない。いろいろ試してはいるけどなかなか寝付けない。
そんな時はどうしたらいいのだろう・・・という方は

①寝床の中に悩みを持ち込まない
昼間の悩みが思い浮かんでしまったらメモをして、翌朝に考えるようにする

②寝室や寝床は眠るための場所
15分くらい横になっても眠れなければ寝床から出て雑誌を読んだり、読書をしたり、音楽を聴く
(スマホやテレビなどの光が出るのは避けましょう)

③睡眠のサイクルを体に意識させる
毎日同じ時間に寝床に入るようにする

④頑張って眠ろうとしない
「眠れなくてもいい、そんな日もある」と楽観視してみる

この4つから始めてみるのはどうでしょうか?

それでも寝付けないようなら、睡眠の記録をつけ、客観的に自身の睡眠について分析してみる方法があります。
書き出してみると「思っていたより眠れていた」「眠りを妨げていたものがわかった」という発見があります。
また、睡眠時間は人それぞれですので、自分にあった睡眠時間も知るきっかけにもなるかと思います。

「睡眠日誌」というものをつけて認知行動療法を行うなどの治療法も注目されていますので、興味のある方は是非参考にしていただけたらと思います。

かといって受診のハードルが高いと思っているのも日本の現状です。
こんな時は次回のコラムでお伝えする「病院の見つけ方・選び方」を参考にしていただければと思います!乞うご期待!

利用者様でご希望の方は睡眠日誌を記入するお手伝いなどできればと思っております。

睡眠の質を高めて、笑顔のある、あなたらしい人生を!

(※Footageの様子はHPInstagram で紹介させて頂いております。)

参考文献:
『自分でできる「不眠」克服ワークブック 短期睡眠行動療法自習帳 』渡辺範雄、創元社
『好きになる睡眠医学 第2版』内田直、講談社サイエンティフィク
「睡眠障害国際分類 第2版診断とコードの手引(ICSD-2)」 American Academy
of Sleep Medicine, 日本睡眠学会診断分類委員会(訳)、医学書院
Inoue S, Yorifuji T, Sugiyama M, Ohta T, Ishikawa-Takata K, Doi H. Does habitual physical activity prevent insomnia? A cross-sectional and longitudinal study of elderly Japanese. J Aging Phys Act 2013;21:119-139
Bulletin of Aichi Univ. of Education, 61 (Educational Sciences). pp. 53 – 58, March, 2012


著者:杉本 真弓(看護師 公認心理師 Footage訪問看護ステーション守山)