はじめに

前回までのコラムでは、「自律分散型組織」をテーマに2本のコラムを掲載させていただきました。
今回は、自律分散型組織運営を行なっているFootage訪問看護ステーションで実際に行われている取り組みの一部を紹介していきます。
本コラムを読み進める前に、ぜひ前回までのコラムを一読ください。経営支援コラム:訪問看護の役割と自律分散型組織の親和性について経営支援コラム:自律分散型組織を成功に導くための5つのステップ

Footage訪問看護ステーションで行なっている施策

前回のコラムで自律分散型組織を成功に導く5つのステップを紹介しました。
紹介したステップに沿って、Footage訪問看護ステーションで実施していることを説明していきます。

▪️前提条件

自律分散型組織の導入を目的にしないことが大切

Footage訪問看護ステーションも、最初から自律分散型組織を導入しようと決めていたわけではありません。
開設初期はトップダウン形式の中央集権型組織で試行錯誤しながら訪問看護を運営していました。
その中で、「全員が楽しいと思える会社を作りたい!」と考えるようになり、「みんなが楽しいと思うのはどんな環境だろう」「どんなチームであることが良いのだろうか」「自分たちが目指しているものは何だったか」など話し合う時間も自然と増え、「責任を持ってやり抜くこと」、「チームが良い関係であること」が大切だと共有できました。

そして、より良い会社、より良いチームになるために全員で運営や経営に携わることが大事だという共通認識が生まれ、自律分散型組織での運営へと切り替えました。
これが開設から4ヶ月目の出来事です。
このように、「自律分散型組織という組織形態が今流行っているからやってみよう」という形ではなく、自分たちのやりたいことを実現するのに適していたというのが、導入に至った経緯でした。

▪️①Vision/目標/戦略の策定

自律分散型組織では、チームや個人が自律的に意思決定をします。
チームや個人での意思決定に大きなズレが発生しないように、”ビジョン”や”目標”の策定が大事になります。

株式会社FOOTAGEのMVV

株式会社FOOTAGEでは、Mission・Vision・Value(以下、MVVと表記)を明示しています。
このMVVは一度作り変えたものになります。
所属するメンバーが増えた段階で新たにMVVを見直し、メンバー全員で意見を出し合った末に策定しました。
検討プロセスにメンバー全員が関わることで、MVVが浸透していったなと実感しています。
多様な人が納得した人生を送れるよう、株式会社FOOTAGEのVisionは抽象度が高いものとなっています。

訪問看護事業部のVision

訪問看護事業部にもVisionが存在します。
会社のMVVでは抽象度が高いので、より具体的な事業部のVisionを設定することで、「訪問看護事業を通して何を提供したいのか?」が明確となります。

事業所目標とTOWS分析シート

FOOTAGEでは年末の風物詩として、5年後どういう訪問看護ステーションでありたいかを、それぞれのステーションで考えます。
そこから逆算して、一年後の目標を策定しています。
目標を設定する際は、外部環境を勘案した目標となるように、TOWS分析を活用して目標を策定していきます。
MVVと目標を策定することで、チームメンバーの意思決定の核となるものが共有できるため、チームをより健全かつ効率的に活性化させながら、運営することができます。

▪️②柔軟な組織構造と役割分担の確立

所属するメンバーに対して役割の明確化、経験や興味に応じた役割を割り当てます。
メンバーは役割に応じて主体的に動きますが、定期的にフィードバックすることで、チームを柔軟に変化させ、能力を最大限に活かすことが可能になります。

教育ラダーによる役割の明確化

教育ラダーを活用することで、スキルや経験に応じた役割の明確化を行っています。
「訪問看護のプロフェッショナルチームの一員」として、入職してからマネージャーや高度資格ホルダーとなるまで、定性的かつ段階的に学習可能です。
定期的にフィードバックや評価を実施するため、柔軟に順応していくことが出来ます。

機能別チームや専門家チーム

FOOTAGEには所属事業所を超えて横断的に活動する機能別チームが存在します。
運営管理チーム、Quality Manager チーム、広報チーム、といったチームが存在しており、チーム毎に求める成果を明確にした上で活動しています。
機能別チームは自チームで顕在化した課題を会社全体で共有し、課題解決に取り組みます。
また専門家チームには精神看護専門看護師が在籍しており、専門性を活かしながら看護の質向上に貢献しています。

▪️③コミュニケーションの促進と情報共有の最適化

コミュニケーションの促進と情報共有の最適化は、自律分散型組織の運営において重要な要素です。
これによりメンバーの主体的意思決定や問題解決が容易になります。
訪問看護の現場はメンバーが訪問に出ている時間の方が長く、事業所に滞在する時間は限られます。
従ってメンバーの意識だけでコミュニケーションを促進することは困難であるため、業務フローとして対話の時間を設定しています。

朝礼・昼礼・終礼

1日3回事業所メンバーが集まり、情報を共有する機会を設けています。
体調確認や訪問のスケジュールの確認、特記事項などを申し送ります。

Footagetime

毎日17:30から18:00までカンファレンスの時間として、利用者様や事業所運営について話し合う時間を設けています。
話し合う機会を恒常的に保つことで、日々の疑問などを早期に解決したり、チーム力の向上にも影響を与えています。

ICTの活用

ICTを活用することで情報共有の最適化を図り、業務負担の軽減や効率化に取り組んでいます。
また遠隔でもコミュニケーションを取ることが可能なため、チームのコミュニケーション促進に繋がっています。

▪️④継続的なフィードバック環境

継続的にフィードバックすることで、チームメンバーが自分の強みや弱みを客観的に捉えることを支援しています。
これらを実践することで、自律分散型組織の持続的な成長と進化が実現します。

1on1面談(個人)

メンバー全員に対して、管理者が中心に面談します。
メンバーそれぞれが、個人の目標を立案しているのですが、目標の進捗度などを面談で振り返ります。
また振り返りだけでなく、最近嬉しかった出来事や悲しかった出来事などを雑談するなど、対話の時間としても活用しています。
メンバー同士が相互理解に努めることで、チームとしても成熟していきます。

VisionTime(事業所)

月に1度、事業所の運営についてメンバーで話し合う時間を設けています。
訪問稼働率/利用者増減/残業時間の増減などの財務管理や、品質管理/人事労務など、運営で発生する幅広い事柄について話し合います。
現状を振り返りながら、事業所目標の進捗を確認したり、翌月のVisionTimeまでの行動を決定しています。

▪️⑤組織文化の醸成と人材の育成

組織文化の醸成には丁寧な対話が必要です。
価値観やVisionを共有する機会を多く提供することで、メンバーの協力体制に繋がり、高いパフォーマンスを発揮できます。

集合研修の開催

FOOTAGEグループ全体の新入職員に対して、新入職員研修やフォローアップ研修と呼ばれる計3ヶ月間の集合研修を、年に4回開催しています。
また現任メンバーに対しても、キャッチアップ研修/プリセプター(教育者)研修/マネジメント研修といった集合研修を定期開催することで、学習や組織文化に触れる機会を提供しています。

社内コミュニケーションの機会の提供

環境係を中心として、各季節毎のイベントやFOOTAGE BARというコミュニケーションスペースを主催しています。
普段中々会うことができない他店舗のメンバーとの交流を積極的に行える機会であり、他店舗の文化にも触れる機会を提供しています。

まとめ

本コラムでは自律分散型組織を成功に導く5つのステップに沿って、Footage訪問看護ステーションで実際に行なっている取り組みの一部について紹介いたしました。

紹介した取り組みについて、
・詳細を聞いてみたい。
・他にどんな取り組みを行なっているのか知りたい
などございましたら、経営支援事業部にお問い合わせください。